公簿取引と境界標の設置

私が不動産業に携わり始めた約20年前では、売主・買主の特別の意向がない限り、土地の境界標の復元についてはほとんど行なっておりませんでした。(30~60坪程度の一般的なファミリー向けの大きさ)

公簿取引」という名目で取引をしており、登記簿に面積が記載してありますから、その面積を前提に取引を進めるという、あいまいな感じなのですが、でもそれがその当時のスタンダードな形態でした。

しかし、”公簿取引”と”境界標の設置”というのは別問題で、公簿取引だから境界標を設置しなくていいというものではない、というのが最近の考え方になってきています。

境界標の設置は、土地または一戸建てを一つの商品とした場合、どこからどこまでが売買対象で、どこからどこまでが商品、ということを明確にするためのものです。

一方、公簿取引というのは、登記簿の面積をもとに売買価格を決めるのであって、実測面積が登記簿の面積がちがっていたとしても、登記簿の面積をもとに売買しますよ、ということです。

ですから、公簿取引と境界標の設置は別物です。

最近の売買契約書は

売買契約書の約款の中に、「売主が現地に境界標を設置(指示)する」という文言が入っています。最近のスタンダードは、売主が売買するにあたって、隣地との境界に境界標を設置することが義務になっています。(ただし道路部分については、省略が可能となっています。)

もしもその境界標が設置できない場合、売主は契約違反になってしまいます。もしもお隣さんがそこに住んでおられれば、コンタクトもとれるのですが、もしも隣地の所有者が海外に住んでいたり、亡くなって相続が発生し、所有者がまだ特定できていない、という場合には、隣地との境界の協議が物理的にできないこともあります。

そこで、売主の救済策として、売買契約書の特約に「境界標を設置できない場合は、境界に関する説明書」を売主が作成し買主に説明することで足りることにしている場合もありますし、その条文そのものを抹消していることもあります。

もしかしたら、境界設置の作業が面倒くさいから、その条文をはじめから抹消していることもあるかもしれません。お互いが了承していれば、それもダメではないですが、良くはありません。

境界でもめるケース

お隣と、塀などで仕切られていて、お互いに境界の位置についてもめごとがなければ、すんなりと境界標を設置できると思いますが、もしも塀などがない場合、どこが境界なのかもめることがあります。(あってももめることもある)

通常は、境界標を設置する作業を、土地家屋調査士に依頼することが多いです。土地家屋調査士は、法務局で土地の地積測量図を調査し、距離や面積を測って、「ここが境界」というポイントを推測しながら、隣地との話を進めます。根拠のある境界の位置ですから、法務局にある地積測量図通りの位置であれば、たいていは納得してもらえますが、親子代々受け継いできた土地など、「先代からこの位置が境界」と聞いていて、法務局の測量図の位置と違う位置を主張されるときもあります。仮にその位置で境界を確定したときに、売買対象の土地面積が登記簿と同じだけ確保できていれば問題ないとは思うのですが、大幅に登記簿の面積よりも少なくなったとすると、買主はそれで納得できなくなります。

こういう場合は、白紙解約になることが多いです。代金を面積が減った分だけ減額して、そのまま契約を履行することも可能ですが、買主がもともと見学に来た時よりも、大幅に面積が減ってしまったら、普通はイヤだと思うはずです。

稀にこういうこともあるので、売買契約を締結する時点で、お隣が連絡が取れない、もしくは境界について疑義が生じている、という場合には、白紙解約の条項を設けておく方がいいと思います。

測量は必要か?

土地の境界標を設置する場合、境界から境界までを測りますし、もともと登記簿にある面積が確保できるかどうかもチェックの対象ですから、測量は必然的に行なうことになります。ですから、境界標設置(復元)を土地家屋調査士に依頼すると、すべての境界標を設置し終わったときに、測量図も作ってくれます。

また次の段階として、登記簿の面積と、新たに土地家屋調査士が作成した測量図の面積がちがっていた場合、登記簿の面積を訂正(地積更正登記)するかどうか、ということがあります。

仮に地積更正登記を行なうとすると、境界標の設置(復元)と測量図の作成だけでは、地積更正登記はできません。地積更正登記を行なうには、今までの作業に加えて、隣地所有者との境界についての確認書が必要になります。この確認書を「筆界確認書」と言います。

「筆界確認書」は一般的には、土地家屋調査士が測量図を添付し、隣接する所有者同士の両者が筆界確認書にハンコを押して作製します。そしてそのハンコは実印で印鑑証明書の添付も必要になります

もしも隣接地が3件あれば、3件分の筆界確認書が必要です。土地家屋調査士の手間も増えますので、費用も高くなります。

土地の実測面積が登記簿面積と違う場合

例1 土地の実測面積が、登記簿の面積より多い場合

なんとなく登記したくなりますが(面積が増えるので)、登記簿の面積が増えると当然のことながら、固定資産税が高くなります。実際の土地面積がどれくらいあるのかというのは、その根拠である土地家屋調査士の作成した地積測量図があるので、わざわざ地積更正登記をするための登記費用まで支払って、さらに固定資産税が高くなるようなことを自ら進んでされる方は少ないと思います。

例2 土地の実測面積が、登記簿の面積より少ない場合

例1から考えると、少なく登記したほうが固定資産税が安くなるので、登記したほうがトクなのかと思うのですが、こちらも固定資産税がどれだけ安くなるのか、そして地積更正登記をしてまでその費用対効果が得られるのか、検証したうえで決めるのがいいと思われます。

ただ私個人としては、わざわざ登記簿の面積を減らして(表面上の)資産価値を落とさなくてもいいのではないかと思いますが。

売買ではどこまでをするべきか

上記の例を読んでいただくと、一つの土地(または土地と建物)を売買するときに、地積更正登記までするのはあまりメリットがないと思われますので、隣地との境界標の設置(復元)までで十分だと思います。

でも、もし買主が購入後、土地を分筆(2つ以上に土地を分ける)場合は、土地の地積更正登記は必須となります。たとえば、買主が不動産業者の場合です。大きな土地を不動産業者が購入し、のちに土地を分筆して土地を分譲したり、建売住宅を分譲したりするケースがあります。この場合は、購入後に分筆を必要としますので、買主の不動産業者が地積更正登記(もしくは筆界確認書の取得まで)を条件としてきます。

例外もある(と思います)

例外もあると思いますので、その都度、土地家屋調査士に相談をしていただき、きちんと回答をもらってから行動していただく方がいいです。もしも土地家屋調査士のつてがなければ、信用のできる土地家屋調査士をご紹介しますので、お気軽にきくまる不動産へお問い合わせください。

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投稿者プロフィール

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住友不動産販売株式会社芦屋営業センターに9年勤務。その後独立開業。保有資格は宅地建物取引士、インテリアコーディネーター。不動産を一生の仕事と決めて頑張っております。